異類中行
三月二十六日寒い朝でした。寺山(千聖の森)入口にあるウサギ小屋。数羽の赤ちゃんウサギが育児放棄によって穴の外に出されていました。発見時には、一羽を残して死亡。生き残った一羽を両手で包み寺へ持ち帰り保温。
保温の為小さなダンボール箱にワラを敷き、ペット用のヒーターを用意しました。箱内には、温度計・湿度計を取り付け、箱内温度を二十六~二十九度に設定。ミルクは、小動物用ミルクにビオフェルミン(乳酸菌)を少量まぜ一日に四回スポイトで授乳。ミルクの温度は約四十三度としました。授乳時には、赤ちゃんをタオルで包み・授乳后は、ぬるま湯につけたティッシュペーパーで柔らかく刺激をあたえおしっこをさせました。
毎日、忙しい修禅寺の生活。その中で赤ちゃんウサギ(名前・チビ)の子育てが始まったのです。正直大変でした。夜も箱内温度が気になり目がさめるのです。(以前、何度も温度調節の失敗で死なせている為です。)その都度、温度を確かめに行きました。
ミルク作り、その温度調整、授乳、片付け等に慣れるまでには、一時間程かかっていました。三月三十日の時、体重56gでしたが、六月十日(この原稿を書いている日)には、500gにもなっています。今はほとんど手が掛からず。毎日三回、廊下にて運動会のごとく走り廻っています。
『
異類中行』という禅語があります。
「
如何なるか是、異類中行。」
南泉云く。
「
道うことを
見ずや、
智不到の処。切に
忌む
道著することを。道著すれば即ち頭角を生ず。直に須らく異類中に向かって行くべし。」
人類ではなく、異類。人間臭い勝った、負けた。儲かった、損したという事ではないぞ。植物達のように、動物達のように、ウサギの
如く、今・ココを屁理屈なしに精一杯生き切れよと。
我々、全ての存在は、今・ココと言う移り変って行く無常の当体の中に在ります。ああだ・こうだと
道著しているヒマなどないのですよ。
水清徹地兮、魚行似魚。
<水
清んで徹地なり、魚
行いて魚に
似たり>
空闊透天兮、鳥飛如鳥。
<空
闊うして透天なり、鳥飛んで鳥の
如し>
